中小企業の従業員採用
中小企業の経営について相談に乗っていると、その課題が多岐に渡る場合が多くあります。私の場合は、IT関係からご相談頂くことが多いですが、収益力向上、マーケティング、組織力向上など様々です。
中でも、労働人口不足の昨今、大手でも必要な人材確保は左団扇という訳ではありません。中小企業においては更に深刻な状況で、上記と同じくらいご相談頂くことも多い状況です。
それもそのはずで、従業員数300人以下の企業における有効求人倍率(求職者1人あたり何件の求人があるかを示す数値)は直近で5.31倍となっており、求職者1人当り5件の求人がある状況となっています。
つまり、完全な売り手市場であり、採用する側が大変な状況であることが数値からも見て取れます。
よくあるご相談
採用に関してよくある相談は
「求人情報が古いままなので、HPの採用ページを更新したい」
「SNSを活用した採用活動を行いたい」
「新しい媒体を使って採用活動を行いたい」
といった様なものが多いです。
確かに、どれも間違っていませんし、やる価値は十分にあると思います。
しかし、私はこれらの相談の前に経営者の方にお聞きする事があります。
「社長の会社はどこに向かいますか?」
「どんな人に来て欲しいですか?」
この質問をすると、ほとんどの経営者から「え?」という反応を頂きます。
確かに、「人の採用が進まない」という困りごとを相談しているのに、「会社の将来」や「欲しい人材」を逆質問されるというのは面食らう状況かと思います。
私がこの様な質問をするのには理由があります。
1.行先が分からない船には誰も乗らない
会社はよく船に例えられる事があります。船頭・船長は当然社長です。船の行先は現実世界の様に完全な到着地点があるわけではありません。しかし、会社がどこに向かって、何をやろうとしているかが分からないのに、船にのって漕ぐのを手伝ってくれないか、というのはかなり不安を感じる依頼でしょう。
社長や社員に惹かれてという事もあり得ますが、やはり会社という船に一緒に乗って欲しいということであれば、その行く先を見せるのは社長の役割と言えるでしょう。
ワンピースのルフィはいつも強引に仲間を引き入れている様に見えますが、「海賊王になる」「ワンピースを見つける」という明確な目標を示した上で、ルフィの魅力に惹かれて仲間になるという流れです。
これは会社でも同じことが言えると思います。
2.誰でもいいは誰もこない
「優秀な人材は大手に取られるから、うちに来てくれる人なら誰でも歓迎ですよ」という社長
こう聞くと謙虚な様にも聞こえますが、聞かされている側からすると「誰でも良いから来て」と言われているように聞こえます。
「誰でもいいなら、私でなくてもよいか・・・」となるのが、人間の心情というものです。
従業員採用はよく結婚に例えられますが、私は少し違うと考えます。
出会いは恋愛の様に見えますが、会社は1つで従業員は複数です。
結婚や恋愛の様な1対1の関係ではありません。
なので、「あなたしかいない」という極端な絞り込みは必要ありません。しかし、会社とあなたの価値観はおおよそ一致していますね。
という確認が取れる事が必要です。そのためにも、会社から「こんな人を求めている」という意思表示は重要になってきます。
3.会社が従業員に何が出来るか
確かに構造的にはそうですが、求職者側にも選択権はあります。
また、従業員は仕事をして、それに対する給与を払っているからOKという考えの社長も多いかもしれません。
企業の資産である人、物、金、情報の中で自主的に能力が高まる可能性があるのは、唯一「人」つまり従業員だけです。
ただ、勝手に成長すると言っても完全に手放しで成長してくれる人はそう多くありません。会社として従業員を成長する手助けが必要になります。
面接でよく「あなたは当社に入ってどの様な事ができますか?」といった事を聞かれたりしますが、就職する方も「会社は私に何をしてくれますか?」と聞きたいところです。
従業員はお客さんじゃない!と思われるかも知れませんが、従業員に最大パフォーマンスを出してもらう事が事業として必要である以上、従業員にどんな環境を与えるか、従業員は何を大切にしているか、などを把握し、可能なものは実現してあげることが必要になるでしょう。
整理には相手が必要
これら以外にも整理するべき事は沢山あります。
それらを明確にしてからでないと、何を使って採用するかを決めても順序が逆になってしまいます。
カッコいい採用サイトやSNSの投稿を始める前に自社の整理から始めてみませんか。