事業承継の原点は「初めての自転車」にある

今回は、企業、組織であれば必ず課題となる「人の育成」についてです。

人材育成は企業の成長に欠かせない重要な要素です。社長であれば次の社長を育ててバトンタッチする「事業承継」がそれにあたります。しかし、多くの企業では「教える」という一方通行のアプローチに偏りがちで、育成の本質を見失っていることがあります。本コラムでは、「初めて自転車に乗る経験」を通して、人材育成の本質的なあり方について考えてみたいと思います。

自転車に乗る経験から学ぶ育成の本質

  • 目標設定と本人の意思
    • 最初に自転車を練習するとき、多くの子供は「乗れるようになりたい」という強い意思を持っています。この目標は本人が主体的に設定したものです。まずは、相手が事業承継されたいと思っているか、その事業に携わりたいと思っているか確認することから始めます。
    • 人材育成においても、個人が自ら目標を設定し、それに向けた意欲を持つことが重要です。教える側が一方的に目標を押し付けても、持続的な成長は期待できません。最終的に「私は押しつけられたのだ」という被害者感情を作ってします可能性が高まります。
  • 適切なサポートと自由のバランス
    • 自転車の練習中、親は補助輪をつけたり、後ろを支えたりしてサポートします。しかし、ずっと手を離さないわけではありません。適切なタイミングでサポートを外し、子供が自力で乗るチャンスを与えます。
    • 同様に、人材育成では「手を差し伸べすぎないこと」が肝心です。自立を促すためには、適度なサポートと自由のバランスを見極める必要があります。
  • 失敗を許容する環境
    • 自転車の練習では、転ぶことがつきものです。それでも何度も挑戦する中で、子供は少しずつコツを掴みます。転ぶことを責められたり、過度に恐れたりすると、成長が妨げられるでしょう。
    • 職場でも同じです。失敗を責める文化では、社員は挑戦を避け、保守的になります。失敗を学びの一環と捉え、安心して挑戦できる環境を整えることが大切です。

自転車の練習とビジネスでの人材育成の共通点

自転車の練習は一人ひとりのペースに合わせて進めます。ある子供は数日で乗れるようになるかもしれませんが、別の子供には数週間かかることもあります。ビジネスにおける人材育成も同じで、画一的な方法ではなく、個人の成長ペースに応じたアプローチが求められます。

  • 成長スピードの違いを尊重する
    • 各社員には、それぞれの強みや学び方があります。自転車に乗る時間が異なるように、成長にかかる時間も人それぞれです。その違いを尊重しながら育成を進めることで、無理なくスキルを伸ばせます。
  • 具体的なフィードバック
    • 自転車の練習では、「もっと少し前を見よう」「ペダルをもっと漕いで」といった具体的なアドバイスが有効です。同じように、人材育成でも曖昧な指示ではなく、具体的なフィードバックが必要です。これにより、本人が次に何をすべきか明確になります。

人材育成の成功には「共感」と「忍耐」と「場づくり」が必要

自転車の練習を見守る親のように、指導者には共感と忍耐が求められます。

社員が思うように成長しないとき、つい焦りや苛立ちを感じることもあるでしょう。しかし、長期的な視点を持ち、成長を信じてサポートし続けることが、最終的な成功に繋がります。また、育成は相手にとって初めてのことを体験させることがになります。当然失敗する確率も高くなり、見ている指導者としてはヒヤヒヤし、それが焦りや苛立ちにつながってきます。

  • 共感:本人の気持ちを理解する
    • 乗り方がわからず戸惑う子供の気持ちに寄り添うように、社員が直面する課題や不安に耳を傾ける姿勢が大切です。これにより、信頼関係が築かれ、本人のモチベーションも高まります。
  • 忍耐:短期的な結果を求めすぎない
    • 自転車に乗れるようになるには時間がかかることを理解している親のように、指導者も短期的な成果だけを求めず、長期的な成長を見守る必要があります。
  • 場づくり:コケる場所を用意する
    • 自転車に初めて乗れた時、一度もこけることなく乗れたという人はいるでしょうか?何度もこけながら、自転車に乗るときの感覚を覚えていく。その時に大切なのは、安全にコケる場所づくりです。こけた先が崖では安心して取り組むことはできません。自転車の練習の相場は家の前、近くの公園、河原の土手といったところでしょう。

人材育成の「成功体験」を作る

自転車に初めて乗れるようになった瞬間の喜びは、子供にとって大きな成功体験です。この成功体験が自信となり、さらなる挑戦を促します。

人材育成でも、小さな成功体験を積み重ねることで、社員の自己効力感を高めることが可能です。

  • 目標を細分化する
    • 自転車に乗る際、最初から完璧を求めるのではなく、補助輪を片方にする。補助輪を取って、親が後ろを持っていてあげる。手を放して何メートルか自走する。といった小さな目標を設定します。人材育成でも、達成可能な小目標を設定し、それをクリアするたびにフィードバックを与えることが効果的です。

 

  • 褒める文化を作る
    「よくやったね」と褒められると、子供は次も頑張ろうと思います。ところが、大人相手になると途端に褒めなくなります。新しいことが出来る様になっても「当たり前」のような顔をします。しかし、大人も同様で、努力や成果を認めることで、成長意欲が高まります。できたら、「出来るようになったね」としっかりと認めてあげることで、相手の自身にもつながります。

結論:自転車に乗るプロセスから学ぶべきこと

「自転車に初めて乗る経験」は、人材育成における普遍的な教訓を教えてくれます。

在りし日の日曜日、天気の良い午後、娘が補助輪はカッコ悪いから大人と同じような自転車にする。と言って始まる。

最初は父親が後ろの荷台を持ってあげて、一緒に走る。

「手、離さないでね!」という娘

「分かってるよ」という父

少し走るとそっと手を放し、娘は何メートルか走るとコケる。

「もー、お父さん手放さないでって言ったじゃん!!」と怒る娘

「ごめん、ごめん。今度はちゃんと持っておくから、もう一回やろう」という父

そんなことを繰り返しているうちに、夕方日が傾いたころには

「お父さん乗れたよ!」という娘の喜びの声と満面の笑顔がある

膝には多少の擦り傷があって、お風呂に入るとしみて痛いけど、そんなことは関係ないくらい嬉しい。この日は一生忘れない。

誰しもそんな光景が残っているものではないだろうか。


それは、本人の意思を尊重し、適切なサポートを行い、失敗を許容する環境を整えるということ。これらを実践することで、事業承継をする次期社長、ひいては社員一人ひとりが自立して成長し、企業全体の競争力が向上します。

事業承継・人材育成において重要なのは、短期的な成果ではなく、長期的な視点で個人と企業の成長を支えることです。このコラムを通じて、自転車に初めて乗るときの感覚を思い出し、人を育てる原点に立ち返るきっかけになれば幸いです。

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